三つの二次曲線に関するある定理の空間での類似
難波誠著「平面図形の幾何学」(現代数学社) の147ページに次の定理が載っています
(表現,記号等は変えています)。
「平面上の三つの既約二次曲線 C1, C2, C3が異なる
二直線 p, q (下図では黒い線)に接しているとする。
Ci と Cj が p, q の他に異なる二直線に接しているとし,
その二直線の交点を Pi, j とすれば P1, 2 , P1, 3 , P2, 3
は一直線上にある。」
この定理の二次曲線を空間内の二次曲面に置き換えた類似を考えます。
x, y, z の二次多項式の零点の集合を二次曲面と呼びます。
ただし, x2+y2+z2+1=0 のように空集合となる場合,
x2+y2+z2=0 のように一点となる場合,
x2+y2=0 のように直線となる場合を除外します。
このとき,二次曲面は次の4つに分類できます。
I 一つまたは二つの平面 例: x2=0, xy=0
II 頂点と呼ぶ一つの点を通る直線の集まり,
この場合の二次曲面を錐と呼ぶ。 例: x2+y2-z2= 0 は (0,0,0) を頂点とする錐
III 互いに平行な直線の集まり 例: x2+y2-1=0
IV I, II, III 以外 例: x2+y2-z2-1=0
IV 型の二次曲面 Θ に対してある平面との交わりの各点で Θ に接する錐を Θ の接錐と呼ぶことにします。
例えば, Θ を x2+y2+z2-1=0 で表される曲面とするとき,
3y2+3z2-(x-2)2=0 で表される曲面は (2,0,0) を頂点とする
Θ の接錐です(2x-1=0 で表される平面との交わりで接しています)。
定理 1 IV 型の二次曲面 Θ に錐 Δ が三点以上で接していれば,
Δ は Θ の接錐である。
IV 型の相異なる二次曲面 Θ1, Θ2 に対して錐 Δ が
両方の接錐であるとき, Δ を Θ1, Θ2 の共接錐と呼ぶことにします。
定理 2 IV 型の相異なる二つの二次曲面の共接錐は高々二つである。
定理 3 Δ が IV 型の相異なる三つの二次曲面 Θ1, Θ2, Θ3
の接錐であるとする。
Θ1, Θ2, Θ3 のどの二つも Δ の他に共接錐を持つとすれば,
それらの頂点は一直線上にある。
線形代数と実射影空間の知識のある方向けの解説
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